「金山移動ログ 002」
何も予定のない休日午前7時、丁寧に機能する体内時計に叩き起こされる。寝起き一番に太陽光が目に入る。平日朝は青白いスマホの画面の光を浴びてばかり。人間の健全な刺激だ。
同時に外から耳を刺激する町内放送が流れる。幼き頃どこからともなく聞こえる「夕焼けこやけ」に一抹の寂しさを感じたのを思い出す。「おはようございます」と澄んだ外の空気に共鳴する。土地の音は記憶に残るようだ。朝が来た。
身体を起こして朝食の準備を始めれば理想と知りつつ、ほどよく涼しくなった室温に布団の熱が恋しく、再び安息地へ戻る。

世の中には「朝方」「夜方」の2種類の人間がいる。もっぱら後者の私は、いつになっても朝を好きになれない。それでも金山に来た時は、ほんの少し寝起きが気持ちよく感じられるようになった。
鳥のさえずりや虫の声。上京してから聞かなかった子守唄が快眠を導くのか。睡眠研究に興味が出てきた。スマホで意味のないスワイプを重ねて飽きた頃、一杯の水を求めて蛇口へ向かう。空白を楽しむ余力。今日は何をしようか。
